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🪷 は じ め に|“柄”を読むということ

着物の柄合わせや着こなし方についての本やYouTubeでは、今やたくさんの情報にあふれています。季節感の出し方、格式のルール、TPOに合わせた色柄の選び方……。

どれも、日本の文化の奥深さを感じる、たいせつな視点です。

でも私は、もう少し違った角度から、着物の柄を眺めてみたいと思っています。それは、“着る”ための柄ではなく、“デザインとして向き合う”柄。そこに流れるリズムや色の重なり、構図の妙を見つけていく。

キモノボードは、そうした視点で、着物の布そのものを「時代や文化を超えたデザイン」として見つめなおし、再構成したものつくりを意識しています。

今回のブログでは、西洋美術やデザインの流れと照らし合わせながら、着物に表現されてきたさまざまな柄や技法を紹介してみたいと思います。
それはきっと、古布に宿る美しさが、単なる“和の伝統”ではなく、もっと広く、世界の美術やデザインとつながっていることを感じられる視点になるはずです。

そして、私たちがふだん「好き」と感じる着物の柄の一枚の布の向こうには、実はピカソカンディンスキーウィリアム・モリス、他沢山の絵画たちと響き合っている何かが、そっと潜んでいるかもしれません。

世界とつながるキモノ表現


① 印象派(1870年代) イメージ

▶️感覚・光・一瞬の美
• 西洋の思想:光の移ろい、外光、自然の中の色彩の揺らぎ

• リンクする着物柄:
• ぼかし染め(霞、夕焼けのようなグラデーション)
• 水辺模様(水の揺らぎを染めで表現)
• 絽や紗の透け感 → 光と空気をまとう感覚

👘 江ぼかしを用いた柄 → 印象派の空気感と通じる

② キュビズム(1910年代) イメージ

▶️幾何構成・多視点の抽象
• 西洋の思想:物体を分解し再構成。面・線の構成

• リンクする着物柄:
• 市松模様・角通し・麻の葉など幾何学文様
• 更紗の幾何構成柄(インド・ペルシャ由来)
• 縞・格子の中に花を分解的に配置した意匠

👘 アンティークの名古屋帯に見られる市松+植物の構成はキュビズム的視点

③ 表現主義・抽象絵画(1920年代〜) リンク

▶️感情や精神の内面を形に
• 西洋の思想:色や形で心象風景を描く。個の表現重視

• リンクする着物柄:
• 友禅の自由画風柄(鳥・木・空想的風景)
• 夢幻的な模様:龍・雲・幻想の森
• 紅型(びんがた)での自由な色彩とモチーフ

👘 鮮やかな沖縄紅型のモチーフは、カンディンスキーの抽象画に似た自由さがある

④ バウハウス(1919〜) リンク

▶️機能美・構成・シンプル化
• 西洋の思想:装飾を廃した機能美、直線、基本形態の追求

• リンクする着物柄:
• 白地に黒の絞りや幾何染め(丸・線・格子)
• 工芸的視点で見た紬や久留米絣の規則模様
• 木綿着物にみられる反復的デザイン性

👘 型紙を用いた反復模様 、銘仙など→ グリッド構造でバウハウス的機能美に近い

⑤ 抽象表現主義(1940〜50年代)リンク

▶️自動性・感情の爆発・身体性
• 西洋の思想:筆致や色でのエネルギー表現(ポロック、ロスコ)

• リンクする着物柄:
• 墨流し(マーブリング) → 自然な流れと偶然性
• 大胆な絞りや辻が花の絞り染め
• 大胆な一筆の刷毛柄や抽象的な植物模様

👘 古い浴衣に見られる藍の激しい刷毛柄も? → アクション・ペインティング的要素

⑥ ミニマリズム(1960年代〜) リンク

▶️最小限・静寂・余白の美
• 西洋の思想:意味を削ぎ落とした構成美。形状と余白の緊張感

• リンクする着物柄:
• 無地に近い色無地・一つ紋
• 裾にだけ線が引かれた染め(裾ぼかし・掛け衿)
• モダンな現代作家による抽象的な余白のある柄

👘 白地に一筋の金箔や銀刷り → ドナルド・ジャッドのような静謐な美とか?

⑦ ポストモダン(1980年代〜) リンク

▶️引用・混成・アイロニー
• 西洋の思想:歴史・様式の引用と解体、自由なミックス

• リンクする着物柄:
• レトロモダン柄(古典×モダンの融合)
• 帯にアール・デコ風デザイン+伝統文様
• 着物リメイクの創作デザイン(洋風×和風)

👘 大正浪漫の着物にアールヌーヴォー風ライン → デコと和の融合はポストモダン的

このように、キモノボードは、着物を着る視点から少しずらしたARTの視点で着物の柄を読み取っています。
だから、見た目、感じるもの、感覚を感じていただければと思うのです。

次回は、日本美術と照らし合わせながらお話してみたいと思います。

着物ボードでは、只今

👘忘れたくないにっぽんの心。
着物の柄を未来へつなぐ拠点をつくりたい。

と題し、クラウドファンディングで支援をお願いしています。

日本の民族衣装である「着物」。
しかしその美しさの裏で、いま、年間約1兆円相当・72万トン以上の着物が処分されているという現実があります(ChatGPT調べ)。

流行やライフスタイルの変化、管理やリメイクの難しさ。
そして、引越しや別れの中で、どうにもできないまま燃えるゴミとなっていく着物たち。

だからこそ、強く思うのです。
たとえ一部でも、その布を切り取り、「ART」として命をつなぐことができたら──。

現代の染織作家さんたちが生むハギレや、古い着物の断片に宿る物語。
それらを大切にすくい取り、デザインとして再生し、人と文化をつなぐ場所をつくりたい。

そんな想いから、私たちキモノボードは、クラウドファンディングに挑戦しています。
どうかこの活動に、あなたのご支援をお寄せいただけませんか?

気になる方は、ぜひのぞいてみてください!
👘キモノボードクラウドファンディングページへGO💨

また、10月1~31日まで1ヵ月間 ご縁あって、宮崎空港のギャラリーで展示会を行います。
詳細はSNSやブログでご案内いたします。ご旅行の際、お住まいの方はぜひ、宮崎空港ギャラリーに足をお運びいただけましたら幸いです(購入も可能と聞いています)

それでは、最後までおよみくださりありがとうございました。

店主 浜田 アツ子


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info@kimonoboard.com

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